ロールス・ロイスのエクスタシー
ロールス-ロイスのエクスタシー/チャールズ・サイクス

厳ついロールス-ロイスのボンネットに、可憐なマスコット「恍惚の精霊(Spirit of ecstasy)」。
精悍な猫科の肉食動物や力強い馬や牛ではなく、企業の哲学や理念、歴史を抽象化したものでもなく...この「美女と野獣」の取り合わせは、圧倒的な違和感を持って、物語の存在を予感させる。
恍惚の表情をうかべる精霊のモデルの名はエレノア・ソーントン。
エレノアは、ロールス-ロイス社の創立者の一人、チャールズ・スチュアート・ロールズの親友で王立自動車クラブ(RAC)幹部のクロード・ジョンソンの秘書として働いていました。1900年に、RACは自動車の一般的安全性と信頼性を立証するため、サウザント・マイルズ・トライアル(Thousand Miles Trial)を企画し、 これに貴族であるダグラス-スコット・モンタギューが参加します。この時の出会いの後、エレノアは彼の秘書で...愛人になりました。 二人は身分の違いから結婚することはできず、二人の関係は親友を除いて秘密にされます。
1906年に発売された「シルヴァーゴースト」は、ロールス・ロイス社の名声を確立した名車として有名ですが、1910年頃、ダグラス-スコット・モンタギューは、自身の所有するシルヴァーゴーストのボンネットに付けるマスコットの制作を、友人の彫刻家、チャールズ・サイクスに依頼します。(この時代は、ロールス-ロイスのマスコットは、所有者が取り付けるものでした。グロテスクな人形、おもちゃの警察官などもあったようです。)

この時、エレノアがモデルになったマスコットは、二人の秘密の関係を表すかのように、精霊は唇に指を当てていたようです。
1911年からは、正式なマスコットとして、精霊がロールス-ロイス社の車に取り付けられました。
しかし、1915年に地中海からインドへ旅行中のエレノアとモンタギューが乗った船は、Uボートの雷撃を受け、エレノアは溺れ、亡くなってしまうのです。
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